帰り道

byFAP

 

 

ある日の帰り道

俺はいつものように街の人々の行動を眺め

生産性のない考えを頭の中で廻らせていた

 

 


 

 赤信号で歩き出す人を眺めては
『そんなに急いで何処に行くんだい?』
と思い

 人が降りてる最中の地下鉄に乗り込む人を眺めては
『あんたら大人なんだろう。そんなもんなのか?』
と思い

 道端にゴミを捨てる人を眺めては
『あんたはゴミ箱に入れることすらできないのかい?』
と思う

 目につくもの、つくものが矛盾、矛盾の連続
『それでいいのか?』と
問題意識を持つだけで、周りに主張しない
そんな自分の中の「心」と「行動」も矛盾の連続



 『 くだらねえ 』



 そう決めつけて
蔑むような目でヒトの世界を眺めていた

 自分が偉いこと言える立場ではない
それを知っていながら、偉そうな考えを廻らせる

 「バカだな、俺」

 自嘲しつつも、心の中はいつもモヤモヤとしていた




 俺は流行が嫌いだ

 ファッション雑誌に載っている服装なんかにして
それのどこに個性がある?
それのどこが「ファッション」なんだ?
一体、何のための「ファッション」なんだ?
マニュアルがなきゃ、服すら着れないのか

 俺は化粧が嫌いだ

 と言うか、そんなに効果あるとは思えん
むしろ悪い場合を多く見るのだが…

 俺は若者の煙草が嫌いだ

 ガキが吸う必要ねえだろ
全然カッコ良くねえし、馬鹿丸出しだぞ
背伸びがしたいだけなら、一回で止めとけ
マナーくらいは守っとけ
と言うか、煙草なんて世界にいらないだろ



 デブは何着てもデブだし
ブサイクは何をしてもブサイクだ

 それが自分なんだから仕方ねえだろ
整形でもするなら話は別だが

 「センス」がどうのこうのと言われてるけど
そもそも具体的に「いいセンス」って何だ?

 「地味でダサい」と言われる服を着て何が悪い
周りに合わせて服を着ている奴に
んなこと言われる筋合いはねえ
好きな服着ればそれでいいじゃねえか

 好きな服こそ、個性を表現する一つの手段だろ?




 「個性」「自分らしさ」「アイデンティティ」
そんな言葉達が巷に広まっている
表現は違えど中身は同じだ

 要はみんな、自分を出したいだけだ
そして自分を認めてもらいたいだけなんだ

 だが、現実でしていることは矛盾、矛盾の連続
今のヒトはすべて、矛盾から構成されている

 いや、よく考えてみれば、ヒト以外も矛盾の連続だ

 何のために生きているのかわからない生物
「種の保存」と言われているが、本当にそうなのか?

 死んでは生まれ、生まれては死ぬ
永遠とも思える年月、生物はそれを繰り返している

 「破滅に向かってヒトは生きている」と言われてもなお
ヒトは生き続け、ここにいる
地球という生物を食らいつくそうとしながら
それに気づいても尚、貪欲に食らい続けようとしている

 例えヒトがいなくなったとしても
やがて別の生物が進化し、高い知能を持ち
結局は同じ道を歩むのだろう





 すべて、矛盾だ

 

 


 

 

そんな無意味な考えをしていた俺に

今までまったく考えもしなかった一つの結論が

頭の中に「パッ」と出てきた


というか、今まで出てこなかったのがオカシイ




俺は今まで

「矛盾」というものを悪いもの

つまりは、存在するべきではないものと考えていた




だけど、「矛盾」というものの上で、生物は生きている

人間に限らず、すべては「矛盾」から成り立っている


長年考えていた「真理」というもの

その答がようやくわかったような気がした







『 真理とは、「矛盾」である 』







なんと幼稚で単純な答えだろうか



こんな簡単な答、先人がすでに提唱しているかもしれない

もしくは稚拙すぎて提唱すらされていないかもしれない


だが、そんな稚拙な答でも

俺にとっては、とても大きいものだ


この答えが本当に正しいかどうかわからない

もちろん反論があったり、「違う」と言う人もいるだろう

自分の中にある「矛盾」から

目を背けようとしているだけかもしれない


だけど、少なくとも俺の中でこの答は

この先、「真理の一つ」として刻み込まれるだろう



自分なりに答えを出したからって、どうってことはないけれど

なんだかとてもスッキリした







そんなある日の帰り道

いつもと違って穏やかに人々を眺め

満足そうに帰路を急いだ月夜の深夜



冬の寒さが妙に気持ちがよかった

 

 

 

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